正月三が日が過ぎた日曜日、ひとりで店出勤していると「おはようございます。」って声が。赤ちゃんの頃からお母さんといっしょによく来ている、近所の子。この頃はひとりで来ること、多くなりました。たしか小学1年生です。「お茶飲んでく?」「はい。」いつものように、棒茶をグラスに淹れ、熱いので水を足して「はいどうぞ。」「ありがとうございます。」
あっという間に飲んじゃいました。そしたらこんな質問が。「お茶の賞味期限はどのくらいですか?」「えっ?」って思いましたが、ここは『優しく易しく』を心がけお答えしました。
「大体のお茶屋さんは、賞味期限が1年なんだけど、うちは6ヶ月だよ。その理由はね、お茶の香りをもっとよく引き出すために、お茶屋さんが火入れっていって、おちゃっぱに熱を加えるんだ。火入れすると、おちゃっぱに入っている水分も少なくなって長持ちするんだね。でもあんまり火が強いと、お茶のいい香りがなくなっちゃうんだよ。それでうちは、お茶のいい香りを残すために、火入れをゆっくり、少なめにしてしてるの。その分早く飲んでもらいたいもんで、賞味期限を6ヶ月にって、しているんだよ。わかった?」顔見ると、何となくっていう感じなんですが。理科でいろいろ習ったら、もっとわかるでしょうね。そうそう、彼がお茶飲み終わったころ、こんなこと聞いてみたんです。「ねぇ、どうして賞味期限のこと、気になったの?」「だってお茶がいっぱい、いつも出ているから」そう言って彼が指差したのが、茶缶でした。
「このお茶の缶には、おちゃっぱ入ってないんで、いたまないよ。」ちょっとニッコリの子。
展示の茶缶には何もないっていない、大人は知っている。でもこの子は、いつも缶が並んでいて、お茶がダメになっちゃうんじゃあないかって、心配の気持ち持って、来ていたんだなぁって。「じゃあね。」「ありがとうございました。」「またおいでよ。」
自分は経験から、わかっていて当たり前のことも、他の人には当たり前ではない、わからないことも多い。だからどんなことも『優しく、易しく』の心でこれからも伝えていきます。